
昨今のBtoBマーケティングにおいて、「広告コストの高騰」「リードは増えているが、商談につながらない」といった課題を感じている企業は少なくありません。
情報が溢れる現代において、意思決定の鍵を握るのは「信頼」です。不特定多数に向けたメッセージよりも、信頼できる知人やパートナーからの推薦が、最終的な意思決定を後押しするケースは数多く存在します。
そこで今、改めて戦略的な重要性が高まっているのが「リファラルマーケティング」です。本記事では、BtoB企業の担当者の皆さまに向けて、基本から具体的な始め方までを徹底解説します。
- 1. リファラルマーケティングとは
- 2. 「リファラル」にまつわる関連用語とアプローチを整理
- ①リファラルマーケティング
- ②紹介プログラム
- ③紹介キャンペーン
- ④紹介営業
- 3. BtoBにおける3つの代表的な紹介パターン
- パターン1:既存顧客による紹介
- パターン2:ビジネスパートナー・代理店による紹介営業
- パターン3:従業員による紹介
- 4. なぜ今、BtoB企業でリファラルが注目されるのか
- ①広告を超える「信頼性」と「成約率」の高さ
- ②獲得単価(CAC)を劇的に抑える「効率性」
- ③質の高い顧客が定着する「LTV(顧客生涯価値)」の向上
- ④多角的なルートによる「ブランド認知」の自然拡大
- 5. リファラルマーケティングを始めるための5ステップ
- ステップ1:現状分析と目標設定
- ステップ2:ターゲット関係者の特定
- ステップ3:インセンティブ(報酬)設計
- ステップ4:紹介プログラム(仕組み)の構築
- ステップ5:告知と継続的な運用
- 6. 成功を引き寄せるための重要ポイント
- ①優れた体験が大前提
- ②シンプルで分かりやすい仕組み
- ③適切なインセンティブ設計
- ④データ分析と継続的な改善
- 7. 最後に
1. リファラルマーケティングとは
リファラル(紹介)マーケティングとは、既存の顧客やパートナー、従業員といった「すでに関係がある人々」を起点に、第三者への紹介を継続的に生み出すマーケティング戦略です。
友人、同僚、取引先など、信頼関係のある相手からの推薦を活用するため、従来の広告や営業手法と比べて、高い信頼性と成約率が期待できる点が大きな特徴です。
不特定多数への発信(広告やSEOなど)とは異なり、「すでに関係がある人」を介して新たな見込み顧客と接点を持つため、顧客獲得コスト(CAC)を抑えながら、顧客生涯価値(LTV)を高めやすい傾向があります。
2. 「リファラル」にまつわる関連用語とアプローチを整理
「リファラルをやろう」と話し始めると、言葉の定義が曖昧なまま議論が進んでしまうことがあります。まずは関連用語とアプローチを整理し、チーム内で共通言語を作るところから始めましょう。これらを整理して理解しておくことで、「短期的な数字を作りたいのか」「長期的な仕組みを作りたいのか」といった施策の目的を、チーム内で共通認識化しやすくなります。

①リファラルマーケティング
紹介を継続的に生み出すための戦略全体
顧客、パートナー、従業員など、自社を取り巻く複数の関係者を起点に、紹介が自然かつ戦略的に発生し続ける「エコシステム」を包括的に設計・運用する考え方です。単なる施策ではなく、マーケティング戦略の柱の一つとして捉えられます。
②紹介プログラム
紹介を促進するための常設制度
持続的に紹介を促進するための、いわば「常設の制度」のことです。 具体的には、紹介用リンクの発行、報酬ルール、紹介案件のトラッキング(追跡)システムの導入、紹介プロセスの構築などが含まれます。一度作って終わりではなく、常に稼働し続ける「紹介の受け皿」となる土台の部分です。
③紹介キャンペーン
短期的に紹介を加速させるブースト施策
「期間限定で報酬アップ」「特別イベントへの招待」など、通常より強いインセンティブを設け、短期間で紹介数を伸ばすために実施されます。常設の紹介プログラムに勢いをつける役割を果たします。
④紹介営業
人の関係性を活かした具体的な営業活動
営業担当者やパートナー企業が、既存の取引先や自身の人脈を活用して新規顧客を紹介する活動です。特にBtoBでは、デジタルな仕組みだけでなく、この「人による紹介」が成約の決定打になることも少なくありません。
BtoBビジネスでは、まず「紹介営業」が現場で自然発生しているケースが多いのではないでしょうか。そこに「紹介プログラム」という土台を整え、「紹介キャンペーン」で認知を広げる。この全体像をリファラルマーケティングとして管理・最適化していくことが、スムーズな進め方だと私たちは考えています。
3. BtoBにおける3つの代表的な紹介パターン
「リファラル」と聞くと、既存顧客からの紹介だけを想像しがちですが、BtoBではそれだけに留まりません。顧客・パートナー・従業員という複数の関係者が起点となり、紹介のエコシステムが構築されます。

パターン1:既存顧客による紹介
①価値を実感した顧客を起点とする王道ルート
サービス・サービスを実際に利用し、その価値を実感している既存顧客を起点とする最も基本的なパターンです。期待値を超える体験によってファン(ロイヤルカスタマー)になってもらうことが、すべての出発点となります。
②自然な推薦が新たな顧客を呼び込む構造
企業側が紹介しやすいプログラムや特典を用意することで、顧客が業界の知人や取引先へと自然に推薦し、新たな利用が始まるサイクルが生まれます。
③持続的成長を生むバイラルループの形成
紹介者と被紹介者の双方に適切な価値を提供し、満足した新規顧客がさらに次の紹介者となる。この循環を作れるかどうかが、持続的な成長を左右すると私たちは考えています。
パターン2:ビジネスパートナー・代理店による紹介営業
①BtoB特有の高成約率ルート
自社と協力関係にあるビジネスパートナーや代理店のネットワークを活用する、BtoBならではの強力な紹介パターンです。
②既存の取引関係を活かした課題起点の紹介
パートナーが日常的に接している顧客に対し、「課題解決の有力な選択肢」として自社サービスを繋いでもらいます。長年の取引で培われた信頼関係が、成約率の高さを支えます。
③仕組み化による再現性の担保
専用インセンティブや共同マーケティング支援など、パートナーが紹介しやすい環境を整えることで、属人的になりがちな紹介営業を再現性のあるチャネルへと昇華できます。
パターン3:従業員による紹介
①サービス理解が最も深い「内部の推薦者」
自社のサービス価値を誰よりも理解している従業員を起点とする紹介パターンです。
②専門性の高いBtoB商材との高い親和性
特に専門性の高い商材では、従業員の個人的なネットワークが、質の高い商談機会を生むことがあります。
③エンゲージメント向上にも繋がる副次効果
紹介を通じて自社が社会に価値を提供している実感を得られることで、従業員エンゲージメントの向上にも繋がると考えられています。
4. なぜ今、BtoB企業でリファラルが注目されるのか
BtoBマーケティングにおいて、なぜ今リファラルがこれほどまでに重視されているのでしょうか。
「紹介が出る会社はもともと強いだけでは?」と思われることもありますし、「制度を作ったのに紹介が増えなかった」という経験がある方もいるかもしれません。
当社では、リファラルは単なる流行ではなく、獲得単価(CAC)の高騰や情報過多といった構造的な課題に対する、本質的な打ち手になり得ると捉えています。ここでは、リファラルがもたらす代表的な価値を、BtoBの文脈で整理します。
①広告を超える「信頼性」と「成約率」の高さ
BtoBにおいて新たなツールやサービスの導入には、常にリスクが伴います。だからこそ、信頼できる取引先や知人からの推薦は、企業が自ら発信する広告よりも高い信頼を獲得しやすいと考えています。
紹介経由の見込み顧客は、すでに一定の前向きな印象を持って接点を持つため、商談化・成約率が高くなりやすい傾向があります。特に、パートナー企業や代理店を経由した紹介では、既存の取引関係で培われた信頼が土台になるため、商談化から成約までのスピードが早まるケースも少なくありません。
②獲得単価(CAC)を劇的に抑える「効率性」
昨今、有料広告のクリック単価(CPC)やリード獲得単価は上昇傾向にあります。これに対しリファラルは、既存の顧客・パートナー・従業員といった関係者が紹介を行ってくれる仕組みであるため、広告費を積み増し続けなくても新規顧客獲得につながる可能性があります。
もちろん、紹介プログラムの運用やインセンティブのコストは発生します。それでも、不特定多数に向けたキャンペーンと比べると、顧客獲得コスト(CAC)を抑えやすい、持続可能なアプローチになり得ると当社では考えています。
③質の高い顧客が定着する「LTV(顧客生涯価値)」の向上
紹介によって獲得した顧客は、サービスへの期待値が実態と乖離しにくく、結果として長期利用につながる、いわゆる「LTVの高い顧客」になりやすい傾向があります。
背景には、紹介者が自分の信頼をかけて推薦しているため、相手に合うものを選んで紹介するという「事前のフィルタリング」が働いている点があります。さらに、満足した顧客が次の紹介者になっていく循環が生まれると、成長が単発で終わらず、継続的なサイクルへと育っていきます。
④多角的なルートによる「ブランド認知」の自然拡大
リファラルは単一チャネルに留まりません。顧客・パートナー・従業員という複数ルートから紹介が発生することで、業界内での認知が網の目のように広がっていきます。
広告で見かけるだけでなく、信頼している人から何度も名前を聞く。そうした接触が積み重なることで、ブランドの信頼性や権威性が多層的に形成されていくのは、広告だけでは作りにくい価値だと考えています。
BtoB担当者の皆さまにとって「質の高い商談をいかに安定して供給するか」は重要テーマです。リファラルは単なる「安上がりな集客」ではなく、信頼のネットワークから確度の高い商談を引き出す仕組みとして、今後のマーケティング戦略の核になり得るのではないでしょうか。
5. リファラルマーケティングを始めるための5ステップ
リファラル施策というと、いきなり紹介プログラムやツールの導入から検討しがちです。
しかし実際には、「仕組みはあるのに誰も使っていない」「数字が出ず、いつの間にか立ち消えになる」といった失敗も少なくありません。
こうした事態を避けるためには、順序立てて設計していくことが重要です。リファラル(紹介)を「偶発的なラッキー」から「戦略的な仕組み」へと昇華させるために、当社では次のステップを基本形として捉えています。
ステップ1:現状分析と目標設定
まずは、自社が現在どのような「紹介のポテンシャル」を持っているかを可視化することから始めます。
まずは、自社がどの程度の「紹介のポテンシャル」を持っているかを可視化します。
現状の把握
現在どれくらい紹介が自然発生しているか、成約率はどの程度かを確認します。土台の確認
顧客満足度(NPS)や、パートナー・従業員とのエンゲージメントが、紹介を依頼できる状態にあるかを分析します。KPIの設定
「月間の紹介発生数」「紹介経由の成約数」「1件あたりの獲得コスト(CAC)」など、追うべき指標を明確にします。
ステップ2:ターゲット関係者の特定
誰を起点にするのが最も効率的かを見極め、セグメントを明確にします。
顧客セグメントの選定
満足度が高く、業界内での発言力がある層など、紹介が生まれやすい顧客群を特定します。パートナーセグメントの選定
商材との親和性が高く、顧客ネットワークを持つパートナー企業や代理店を選定します。従業員セグメントの特定
顧客接点の多いフロント部門や、信頼を得やすい専門部署など、紹介に適した従業員を特定します。
ステップ3:インセンティブ(報酬)設計
紹介者と被紹介者の双方が「動く理由」を感じられるよう、対象に合わせて設計します。
顧客向けインセンティブ
金銭報酬に加え、割引、無料トライアル延長、限定特典など、利用継続につながる設計を検討します。パートナー向けインセンティブ
成果報酬だけでなく、共同マーケティング支援やトレーニング提供など、パートナーの成長に寄与する要素を盛り込みます。従業員向けインセンティブ
報奨金、表彰、福利厚生ポイントなど、貢献が正当に評価される仕組みを整えます。
ステップ4:紹介プログラム(仕組み)の構築
紹介の心理的・物理的ハードルを下げるための「器」を用意します。
顧客・従業員向けの仕組み
共有用リンク/コードの発行、進捗確認ページ、紹介専用LPなどを用意し、紹介の手間を最小化します。パートナー向けの仕組み
案件登録・進捗・報酬管理を一元化できるパートナーポータルを構築します。あわせて、紹介時に使える資料や素材を提供し、「紹介しやすさ」を徹底します。
ステップ5:告知と継続的な運用
仕組みは作って終わりではありません。浸透させ、磨き続けます。
周知の徹底
管理画面、購入完了画面、サンキューメール、ニュースレター、社内イベントなど、タッチポイントで案内します。PDCAの実行
紹介ルート別の量・質、インセンティブ反応、紹介→商談→成約のCVRなどを分析し、ボトルネックを継続的に改善します。
6. 成功を引き寄せるための重要ポイント
リファラルマーケティングを「戦略的な集客の柱」として機能させるには、以下の4点を意識することが不可欠です。
①優れた体験が大前提
紹介プログラムが魅力的でも、サービス・サービスが期待に応えられなければ紹介は生まれません。紹介者は自身の「信頼」を担保にするため、高い顧客満足度や従業員エンゲージメントが紹介発生の絶対条件となります。
②シンプルで分かりやすい仕組み
プロセスが複雑だと、紹介意欲があっても実行されません。「ワンクリックで共有」「URLをコピーするだけ」といった、紹介者の手間を極限まで省くシンプルな設計を徹底しましょう。
③適切なインセンティブ設計
報酬は魅力的すぎると不正のリスクを招き、少なすぎると動機になりません。ターゲット層の特性に合わせ、「紹介のモチベーション」と「紹介の質」を両立できる最適な報酬を設定することが重要です。
④データ分析と継続的な改善
どのルートからの紹介が多いか、成約率はどうかを定期的に測定します。得られたデータをもとにPDCAを回し、仕組みを常にアップデートし続けることが成功の鍵となります。
7. 最後に
リファラルマーケティングは、単なる集客手法ではなく、顧客やパートナーとの間に築いてきた「信頼という資産」を最大化する戦略です。情報が溢れる現代において、信頼関係を起点とした紹介は、低いコストで高い成約率と顧客生涯価値(LTV)をもたらす極めて本質的なアプローチといえます。
まずは大規模な仕組みを整えるのではなく、小さなプログラムからテスト運用してみてください。データを見ながら自社に最適な「紹介の形」を磨き上げることで、持続的な成長エンジンへと育てていけるはずです。
リファラルマーケティングの仕組み化を支援する「Jolt」は、紹介者の管理、紹介のトラッキング、報酬設計から報酬支払いまでを一元管理し、BtoB企業のリファラル戦略を加速させるプラットフォームです。
リード獲得や商談化に課題を感じている方は、ぜひ一度ご相談ください。
監修者
田中 悠
株式会社AREYO
代表取締役CEO
リファラルマーケティングSaaS「Jolt」を通じて、リファラルマーケティングの戦略策定から紹介プログラムの導入を多方面から支援。
紹介が属人化・形骸化しやすい構造に向き合い、パートナー・顧客・社内から自然と紹介が生まれる仕組みづくりに尽力。
<<主な略歴>>
キヤノン株式会社に新卒入社後、一眼レフカメラのグローバルマーケティングを担当。その後、株式会社プレイドに参画し、セールス、カスタマーサクセス、プロダクトマネジメントを横断し、主にアパレル企業のCX向上を支援。2020年6月より株式会社バニッシュ・スタンダードに参画し、執行役員としてビジネス全体を統括。2025年4月株式会社AREYO創業。
愛媛県松山市出身。みかん好き。
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